5/19(水)
イングリット・フジコ・ヘミング ソロピアノリサイタル
@サントリーホール シューベルト:
即興曲 第3番 変ト長調
楽興の時 第4番 嬰ハ短調
ショパン:
夜想曲
「牧童」
「別れの曲」
「木枯らし」
ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調「葬送」
バッハ:
パルティータ 第一番より
プレリュード
サラバンド
コラール「主よ 人の望みの喜びよ」 カンタータ
リスト:
3つの演奏会用練習曲 第3番 変ニ長調「ため息」
パガニーニによる大練習曲 第6番 イ短調 「主題と演奏」
パガニーニによる大練習曲 第3番 嬰ト短調 「ラ・カンパネラ」
彼女を初めて知ってから十年ほど?(NHKの番組で)
「奇跡のピアニスト」は、いまやチケット入手困難なお方になってしまった。
ようやく生の演奏を聴くことが出来た。
一曲目のシューベルトで涙が出そうになった。
それは優しくせつない調べだった。
この人は、なんてやさしく鍵盤をなぞるのいだろう
弾く、というのとは違う・・・
魂の音楽とも呼ばれているのが、すごくよくわかる。
私の感覚では絵画と同じなのだが、
うまいとかへたとかそういう次元ではない。
心に響いてくるのだ。
彼女にひかれるのは、そこだ。
譜面どおりじゃなくたっていいじゃない、
機械じゃあるまいし
私には私だけのカンパネラがある
テレビのインタビューで語っていた
彼女にひかれるのは、そこだ。
リストを弾くために生まれてきた。
かのヴァーンシュアインにそういわしめた彼女。
「ため息」は、本当にうっとりする。
レエスのドレスを着た中世の優雅な貴婦人が浮かぶ。
夫と愛人との間で揺れる彼女が、庭園の薔薇の陰で、ふとつくため息・・・
なんて、思わず妄想してしまう、そんな感じ。
「ラ・カンパネラ」は、テレビでは彼女の心情そのままに激しく響くものだったけれど、
この日の演奏は、違って聴こえた。
テレビを通して、なので生演奏とは違うのをさしひいても。
そんなことをミュージシャンの友人に話したら、
「もう年なんだよ、演奏がみれてよかったね」
と言われた。
年をとってくると指が動かなくなってくる
若い頃の演奏とは違ってくる
演奏がまるくなってくる
若い頃の技術が劣った分、長年培われた経験であるとか情緒だとかが加わわり、若かった頃とは違った音が生まれる・・・
それを人は円熟というそうな・・・・
演奏がみれてよかったね、は、ジャンル問わず、いつか行こう、あるいはまた聴こうと思っていても、若くして亡くなる方も少なくない(昨年お亡くなりになった浅川マキさんもその一人。
そして最近では、ロニー・ジェイムス・デュオ!!)という意味で。
この日聴いたショパンは、他のピアニストのショパンとはあまりに違っていて驚いた。
そりゃあ、弾き手が違うのだからあたりまえなのだけど、
過去に同じ会場で聴いたショパンは、ピアノを蹴飛ばしたり、投げ飛ばしそうな勢いのあるものだったからだ。
その演奏家は特にそう弾くみたいだけれど。
(私は、ピアノ蹴飛ばしそうなイメージといえば、リスト)
でも、フジコさんのショパンはやさしかった。
リストでさえも。
彼女の衣装もステキだった。
一部では、白と黒のレエスのローブ。
きっと、ご自分で作ったのではないだろうか・・・と思うの。
中にお召しのものも、きっとお袖をご自分でリメイクされたのではないかしら?
(髪飾りもご自分でアレンジされたように思われる)
インタビューで、人と同じなんてきらい、と仰っておられたから。
20分の休憩後
ターコイズブルーのローブのバックには、大きな金色のスパンコールのリボン。
足元も可愛らしかった。
黒のスカート、スパッツ、黒の靴・・・バレエシューズかカンフーシューズ
はにかんだような笑顔で丁寧なお辞儀をされる
何もかもステキ!!
なりやまぬ拍手の中、二曲弾きます、とアンコール曲を紹介したフジコさん
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番ニ短調 「テンペスト」第3楽章
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
本当に可愛らしい女性だった。
演奏も、彼女自身も、とてもとてもチャーミングだった。